第十三話 身軽に石柱や崩れた床を駆けていくの後姿をレイヴンは見つめ続けていた けれど、その姿も倒れた像を越えていったところで見えなくなり そこで初めてレイヴンは木の枝の上に止まっている銀色の鳥へと目を向けて口を開いた 「よー、イーグル。元気?」 精一杯間があって、銀色の鳥から溜息が漏れる 『・・・・・・俺の知り合いに生憎とそのように話す者はいないはずだが』 「そう堅い事言わなくてもいいじゃないの それとも、お隣に誰かいるわけ?」 『ん、あぁ。 そうだな、お前も良く知る人物が 都合が悪いなら今すぐにでも移動するが どうする』 「ここまで聞かれてて いまさらだから別にいいわ」 『それで、どうした』 「おたくのギルドのちゃんについて ちょーっと尋ねたいんだけどいい?」 ほんの僅かに銀色の鳥が息を呑んだ音が聞こえた レイヴンと別れてから、は遺跡の地下への入り口へと走った。 走っている最中に、首領に魔核のことについて聞いていない事に気がつき引き返そうと思ったが またいつでも呼べるかもしれないので大丈夫か と再び足を進める 「あ!おーい!ー!」 カロルがに気がつき大きく手を振ったのは地下から全員が出てきたところのようで 一番後ろを歩いていたリタがちょうど地下から上がってくるところだった。 も大きく手を振り替えしてからユーリたちの元へと駆け寄った。 「盗賊団とフレンさんいた?」 「盗賊は奥にいたけど、フレンはここにはいなかった」 「奥?って、逃げられちゃったの?」 「いえ・・・・・・その、リタが・・・・・・」 エステルは苦笑いを浮かべてリタに目を向ける。 言いにくい事なのか、続きを話そうとはしないしリタも素知らぬ顔をしている。 は疑問符を浮かべながら視線をユーリに向けて説明を要求するような態度を取ったが、 肩を竦められるだけでこれといって何も言ってくれない 「ほら、アスピオに戻るんなら さっさと行くわよ」 「え?ちょっ、と、盗賊はどうなったの!?」 「大丈夫だよ、素直に捕まると思う・・・・・・」 意味深なカロルの一言を最後にこの会話は終わりを向かえ だけが一人、その言葉の意味を図りかねていた。 一度、通った道なのでアスピオへはこれといって何の困難も無く辿り着けた。 再び体を包み込むひんやりとした空気になんとなく懐かしさを覚える 「それにしても、フレンがいなかったのは残念です」 「どっかですれ違っちまったんだろうな」 話題はエステルの呟きによって 騎士フレンのことへと移り変わる エステルはフレンを探して旅を始めたとは聞いていたが、 何の因果かなかなか会う事が叶わないらしい ハルルで魔物を追い返す時に共闘したと言ったら、 エステルはすかさず食いついてきた 「フレンは、フレンは大丈夫でしたか!?」 「え・・・・・・、私が見たときは大丈夫だったし 手紙書けたり、あちこち行けたりするんだから元気だと思う・・・・・?」 「その騎士、何者なの?」 「ユーリの友達です」 エステルから視線をユーリへと向けたリタは、腕を組んだまま深く頷いた 「ふ〜ん、それは苦労するわ」 「なんだよ?」 「別に」 振り返って不機嫌に眉を顰めるユーリを軽くあしらってリタは明後日の方向に視線を逸らし 話の軸を無理やり元へと戻す 「で、なんでそいつがアスピオにいるの?」 「ハルルの結界魔導器を治せる魔導士を探しにーって、書いてあったなぁ」 「あぁ・・・・・・あの青臭いのね あたしのとこにも来たわ」 「やっぱり、断ってたんだ・・・・・・」 「別にいいでしょ?あたしだって忙しいの 騎士の要請なら他の魔導士が動くだろうし もうハルルに戻ったんじゃない?」 「・・・・・・そんな・・・・・・」 やはり、ユーリの言ったとおりにどこかですれ違ってしまっていたらしい エステルはリタの言葉にすっかりと気を落としてしまった。 そんなエステルを見ておけないは何かを考えるようにしてエステルに近づくと ツールポーチの中からパペットを取り出してエステルの前に突き出した 「“キミ キミー そこで落ち込むのは全く良くないノス!” “落ち込んでいては前に進めないノス!”」 「そうですよね・・・・・・、ありがとうございます 」 「“キミと話してるのはじゃないノス!”」 「つか、前となんか変わってないか?それ」 の左手に嵌められたパペットは、 クオイの森で始めて出したチャッピー人形と道化のような顔つきは同じなのだが 兎のように長い耳と狐のように面長い顔つきをしている ふっふっふ、と笑って空いている右手の親指を立ててユーリに向かってウインクをした 「ユーリくん 大・正・解! この子はチャッピーくんではなく!」 「“シャボンノ・エルディゴット2世ノス!”」 「・・・・・・なに、その名前」 カロルはすっかり白けきり ユーリやリタもそのセンスを疑うかのような名前に言葉を失っている 興味なさそうにラピードが欠伸をし キラキラと目を輝かせてエステルがシャボンノに律儀に礼をいれて挨拶をし始める 「・・・・・・呆れた。あたし、付き合ってらんないから先に行くわよ」 「同感だ エステル、 ほどほどにして置けよ ほら、カロル ラピード行くぞ」 「ガウッ!」 「あれ、ほっといていいの?」 「ほっとけ、ほっとけ」 何度も振り返るカロルだが、ユーリとリタは本気で置いていく気で進んでいく しばらくの間、それに気がつかなかったとエステルだったが エステルが途中で皆がいなくなっていることに気がつき二人で急いでリタの小屋へと向かった。 |