第八話 「あれ?のリボンって前から白色でしたっけ?」 アスピオへもうすぐ着くといった矢先、口元に手を当てたエステルに尋ねられる エステルより先を歩いていたは肩をびくつかせて振り向いた途端に全身全霊を込めて否定する 「そうですか・・・・・・? でも確か以前は緑色だった気がしたんですが・・・・・・」 「あ、あっれー!そうだっけー!?」 「降格祝いに貰ったんだよな」 「「降格祝い?」」 聞きなれない単語にカロルとエステルはなんだろうと互いに顔を見合わせる まさか昨晩の首領とのやりとりが聞かれていたとは思っても見なかったは驚きのあまりユーリから勢いよく逃げ去り 大きな石の影に隠れたかと思うと、ひょっこりと顔を覗かせてユーリを指差し 「な、なななななんで それを!?」 の心情を表しているのか左手に嵌められたパペットのチャッピーはオドオドとしている その間抜けっぷりに、ユーリは帝都でいつもしつこく追いかけてくる凸凹コンビを思い出し、なら疑ったところで意味が無いと思い知らされた 「昨日のやつ、ちょーっと聞こえちまってさ な、ラピード」 「ワウッ!」 「恥だ!一生の恥だ! あぁああっ!降格された原因はユーリとラピードに気がつかなかったからこともあるのね! 不覚だ!落とし穴に埋もれたい!」 支離滅裂なことを叫び終わったかと思うと、は石の影に姿を隠してしまう 「あーあ・・・・・・隠れちゃったよ どうすんのさ、ユーリ」 「別にどうもしやしねぇよ ー そのままそこにいるつもりなら置いてくぞ!」 「うぉう!ちょっと待って!置いてかないで!」 ユーリの言葉はどうやら効果があったようでは躓いて転んでしまいそうになりながら歩き始めているユーリたちと合流を果たし は普段の調子に戻り、エステルと雑談をしながらアスピオへと足を進めていった 洞窟の中へと入ると日の光が急激に少なくなり暗く肌寒くなった。 太陽の代わりに洞窟の中は魔導器が明かりを点々と灯している カツカツと足音が幾重にも洞窟内を反響し耳へと戻ってくる ここ、アスピオは人が住むにしては些か奇妙な風貌をした洞窟の街だった アスピオに訪れたまでは良かったのだが 街の中に入るには正式な許可書が必要で街の入り口を守る騎士たちに門前払いをされてしまった。 けれどもこの街の中にはエステルの探すフレンもいれば水道魔導器の魔核を盗んだというモルディオもいる さらに言うと、の魔核も誰か魔導器の技術に長けた人に治してもらわなければならい どこか別の入り口を探してそこからこっそりと入るか壁をよじ登ってでも無理やり中へ入るかのどちらかになった。 が魔導器 の力を使い、翅を使って空を飛び皆を運ぶ。といった案も出てきたのだけど それはそれで目立ちすぎてしまうから危ないし壊れた魔核を無理に動かすのは危険だということで却下された。 騎士が見張る入り口から少しそれた道へ入ると、ぽう と明かりが一つ点けられた先に小さな木戸が姿を見せていた。 おそらくそこからなら街へ入れるだろうとユーリが戸に手をかけたが、押しても引いても戸はガタガタと揺れるだけで開く気配が全く無かった。 諦めて壁をよじ登るしかないか。溜息をついていた時、カチャリと施錠された鍵が開いた音がした。 ユーリが振り返って見てみると、戸の前に立ったカロルが得意げに頷いて戸から離れる は先ほどユーリがしたように戸の前に立ち少しだけ戸を押してみると確かに開いている 「おぉー カロル凄い・・・・・・」 「ダメですよ!そんな泥棒みたいなこと!」 「・・・・・・おまえのいるギルドって、魔物狩るのが仕事だよな? 盗賊ギルドも兼ねてんのかよ」 「え、あ、うん・・・・・・ まぁ、ボクぐらいだよ。こんなことまでやれるのは」 「ご苦労さん、んじゃ行くか」 おー!と返事をしてが戸を開ける。 気にした様子無く中へと入ると続けて入っていこうとするユーリの腕を掴みエステルは首を横に振った。 「ほんとにダメですって!フレンを待ちましょう」 足を止めて振り返り、ユーリは肩を落とした 「フレンが出てくる偶然に期待できるほど オレ、我慢強くないんだよ だいたい、こういうときに法とか規則に縛られんの嫌で オレ、騎士辞めたんだし」 「え、でも・・・・・・」 エステルは掴んだ腕をそっと放して、視線を落とす いつまでも入ってこないユーリたちを不思議がって先に中に入っていたが戻ってきて 行かないの?と声をかける。すぐに行く。と返事をしてユーリはエステルを再度振り返る 「んじゃ、エステルはここで見張りよろしくな」 「え、えっと、でも、あの・・・・・・」 エステルが顔を上げると、カロルは既に戸の中に入ってしまいユーリとそれに寄り添うラピードの足もそちらへと向かっている 本気で置いていく気なのだとエステルは悟り、揺れ動く背徳感よりフレンに会いたいという思いが増していき 「わ、わたしも行きますっ!」 「奥の小屋か・・・・・・」 たまたま赤毛の魔導士に聞いた情報によるとモルディオという人物は随分と変わった人物で奥の小屋にひとりで住んでいるらしい アスピオにモルディオを捕まえに来たユーリたちはすぐにその小屋へと向かおうとしている 一方、アスピオには別件で用があるはうーん。と少し考えて一度離脱してから今いる本だらけの場所で合流すると伝えた。 「魔核治してくれる奴になんかアテでもあるのか?」 「リタっていう人がこの街で一番 魔導器に詳しいって聞いたことあるから その人を探して訪ねてみるつもり」 「そっか、治るといいな」 「うん ありがとう ユーリも水道魔導器の魔核、絶対に取り返してね」 「あったりまえだ」 パチンとハイタッチをしてからそれぞれ別の目的の為に別の道を歩いていった。 |