第七話 アスピオへ向かう道中、夜も更けてかなり経ち 流石にこのまま徹夜して歩き続けていざという時に動けなかったらいけないのでハルルをでてしばらくしてからユーリたちはテントを張り野営をすることにした。 乾いた音を立てて燃えた木の枝が弾ける 焚き火を囲むように座り込みかなり遅い、ユーリ作の晩御飯を食べていた。 同じ食事を食べながら取り止めの無い話があれやこれやと無尽蔵に出てくる ギルドの話になるとカロルが魔狩りの剣の一員だったことにが驚いたり、逆に蒼空の配達の話になるとが楽しげに話してそれをエステルが興味を示す 穏やかな雰囲気の中で食事は進み、ふとはハルルの樹が元に戻るときに自分の魔導器が突然光りだしたときの事を思い出した。 改めて魔導器の魔核を見てみても魔核に傷が入っており、なぜ光ったのかわからず ユーリたちにそんなことがあったと相談してみても 推測の中だけでの意見しか飛び交わず これといった原因といういものは掴めそうに無い 「エステルの治癒術に反応してる。ってのはないか?」 「それなら普段からぴっかぴっか光ってると思うけど」 「が無意識に魔導器を使おうとしてた とかじゃないの?」 「うーん・・・・・・無くもなさそうだなぁ そういうの とりあえず、首領に報告してみる。」 晩御飯を食べ終えたは立ち上がって焚き火の傍を離れる 食事の手を止めてユーリはの後を追う為に立ち上がった。 エステルはこれからユーリが何をしようとしているのかを悟り、そういうのはよくないです。と咎める 「があのザギの仲間だったり、騎士団につながりがあったらどうするんだ?」 「それは・・・・・・」 「平気だって、バレ無いようにするから」 人差し指を口元に当ててニヤリと笑ったユーリはエステルが止めるのも聞かずに走っていき、ラピードもその後を追いかける 「なんだかユーリらしくないね」 「そうですね・・・・・・ユーリはのこと信用してなかったのでしょうか?」 は口に指を咥えて指笛を吹いた すると、どこからか微かに鳥の羽音が聞こえ始め、指笛に呼応するように甲高い鳴き声が響く はその音の正体を見つけると指笛を止めて灯台の光のように右手に光を灯し大きく振る その光を目印にして銀色の羽を持つ尾の長い美しい鳥がのすぐ傍にある樹の枝に舞い降りた 木々の陰からユーリは姿を隠し身を屈めてその様子を盗み見て 後からやってきたラピードはユーリの意図を汲んで同じように息を潜めて物音一つ立てずに草木の間に伏せる 「所属SU 階級は緑、名を」 SU というユーリには耳覚えの無い言葉が耳に残った の所属しているギルドは『蒼空の配達』でそのような名前のはずが無い あとをつけて正解だったか?と思いながら様子を伺い続ける 『か、どうした。しばらくの間 音沙汰が無かったようだが』 銀色の鳥が黒い瞳を月明かりに輝かせながら言葉を紡ぐ その声は鳥自身の声などではなく、どこか別の場所にいる人物が鳥を通じてと話しているようだ 「ハルルについてから色々とありまして・・・・・・ 現在は、フレン・シーフォという騎士を追っております」 『仕事か』 「あ、いえ そういうわけではありません その・・・・・・なんていうか」 『報告は簡潔にしろ』 「共に進んでいるエステリーゼという方がそのフレンを追っており 目的地が同じ為、行動を共にしております。」 『お前と二人だけか』 「いえ、他に帝都ザーフィアスのユーリ・ローウェルとその飼い犬のラピード それと、ダングレストのカロル・カペルです」 『ご苦労 引き続きその者とは行動を共にするように』 「なぜですか?」 『知らなくていい 報告は以上か』 ユーリはラピードと目を合わせ どうみても疑わしい行動をしているをどうするべきかとラピードに目で問いかける ラピードは視線を銀色の鳥へと向けた。もう少し様子を見るといったところだろう 肩を竦めてユーリは再びと鳥へ視線を戻す 「尋ねたいことがあるのですが よろしいですか?」 『なんだ』 「魔導器が突然光りだしたんですけどこれって、いったい何なのでしょうか」 銀色の鳥が急に黙り込んだ 不意に舞い降りた沈黙に、不味いことを言ってしまったのではないかとは冷や汗をかく もし、魔導器の魔核にヒビが入ったと知られてしまったらどうすればよいのだろうか そもそも、今の発言で知られてしまい どんな仕置きが待っているのかと思うだけで身の毛がよだつ 今日この時ほど、は自らの首領に対して聞かなければ良かった。と後悔したことはないだろう 『貴様・・・・・・もしや・・・・・・』 長い間沈黙を保っていた鳥の嘴が動き、相手に自分は見えていないとわかりつつも は首を大きく横に振り 「魔核は全然大丈夫です!ヒビなんてこれっぽっちも入ってません!超無事です! もう、力が有り余りすぎちゃって逆に調子良すぎて困ります!」 再び重い沈黙が降りる 思わず大きな声を出して言い訳をしたが、あとから思い返せばまるで墓穴を掘った感じだ きらりと鳥の目が赤く光り、鳥の声の主の思いを反映したかのようにその目が細められる 『貴様というやつは・・・・・・』 怒りを含んだその言葉に、は反射的に土下座をし頭を力いっぱい下げ そこにいる鳥が本当に首領であるように思っているのか、はたまたそんな事を考える余裕すらなくなってしまったのか些か滑稽な有様になっている 「うああああ!ごめんなさいごめんなさい!嘘です!嘘つきました! 実をいうと魔核にヒビが入ってます! あっ、で でもほんのちょびっとだけですから!本当にちょっとだけですから! これからも仕事はちゃんとこなしますし、魔核の傷もちゃんと治しますから! 後生ですから、降格だけはご勘弁を!」 『馬鹿者め・・・・・・ 貴様の願いどおり、後日 純白のリボンを送ってやる』 「白!?よりによって白!?最下級!?」 『降格おめでとう 』 その言葉を最後に銀色の鳥はその美しい羽を大きく広げ羽ばたいていき 必死になっては呼び戻そうと何度も何度もその鳥を呼んだが、悲しきかな無常にも鳥はその姿を闇へと消してしまった 残されたはただ一人 人生の終わりが来たかのように放心状態になり こっそりと覗き見ていたユーリはラピードと共にを慰めに行ってあげるかどうか迷ったが それでは今まで隠れていた意味がなくなってしまうので、心を鬼にしてエステルたちの待つ焚き火の元へと音を立てずに戻っていった |